「9割の人が知らない」「後で必ず後悔する」「たった1つの設定」——こうした煽り文句を見かけることが増えました。確かにSNSでは拡散されやすく、一見効果的に思えます。

しかし、技術ブログでこうしたアプローチは本当に有効なのでしょうか?

44日間、4つの記事でABテストを実施し、その答えを探りました。

    テストの概要

    対象記事(4セット8記事)

    1. WordPress Body管理

      • オリジナル:「【WordPress】bodyのidにスラッグ名、body_classに任意のクラスを追加する方法」
      • 煽り版:「WordPressのbody要素を適切に管理しないと、後で必ず後悔する3つの理由」
    2. WordPressショートコード

      • オリジナル:「WordPressショートコードを使用してPHP、固定ページ、投稿を呼び出す方法」
      • 煽り版:「なぜプロのWordPress開発者は『ショートコード』でPHP・固定ページ・投稿を操るのか?」
    3. Swiper自動再生

      • オリジナル:「Swiperのautoplay(自動再生)が止まらないようにする方法」
      • 改善版:「Swiperの自動再生が『なぜ』止まるのか?本質から理解する設定ガイド」
    4. WordPress Security

      • オリジナル:「WordPressサイトを守る: Solid Security無料版の設定ガイド」
      • 煽り版:「9割の人が知らない:WordPressを守る『たった1つ』の設定」

    測定指標

    • PV数(ページビュー)
    • 平均滞在時間
    • 直帰率

    期間:2025年9月1日〜10月14日(44日間)

    結果:数字が示した明確な差

    PV数の比較

    記事 オリジナル 煽り版 差分
    WordPress Body 74 PV 3 PV -96%
    Shortcode 7 PV 7 PV 同等
    Swiper 65 PV 52 PV -20%
    Security 22 PV 1 PV -95%
    合計 168 PV 63 PV -62%

    煽り版は、オリジナルと比較して平均62%もPV数が減少しました。

    なぜこの結果になったのか

    1. 検索キーワードのミスマッチ

    技術記事を探すユーザーは、具体的な実装方法を求めています。

    オリジナル版のタイトル:

    • body_class
    • ショートコード 使い方
    • Swiper autoplay 止まる

    これらは検索されやすいキーワードです。

    煽り版のタイトル:

    • 適切に管理
    • プロの開発者
    • 9割の人が知らない

    これらは検索されません。

    2. 検索意図との乖離

    技術記事の読者が求めているもの:

    • 今すぐ解決したい問題の答え
    • コピペできる実装コード
    • 具体的な手順

    煽り記事が提供するもの:

    • 「気づき」や「納得感」
    • 概念的な説明
    • 抽象的な理解

    このギャップが、PV数の大幅な減少につながりました。

    3. 読者の質の違い

    SNSで拡散される記事と、検索経由で訪れる技術記事では、読者層が異なります。

    技術ブログの読者:

    • 具体的な問題を抱えている
    • 解決方法を求めている
    • 煽りを見抜く目を持つ
    • 実質的な価値を重視

    SNS経由の読者:

    • 「へぇ」という発見を求める
    • 知的好奇心を満たしたい
    • シェアしやすさを重視

    4. 虚偽の体験談の問題

    煽り版の記事には「知人のサイトがハッキングされた」といった、実際には体験していないエピソードを含めていました。

    こうした虚偽は:

    • 読者に見透かされる
    • サイトの信頼性を損なう
    • 長期的なブランド価値を毀損する

    唯一の例外:Swiper記事

    4記事の中で、Swiper記事だけは比較的良好な結果(-20%)を示しました。

    なぜSwiperだけ異なったのか

    タイトルの違い:

    • オリジナル:「止まらないようにする方法」→ 即座の解決
    • 改善版:「なぜ止まるのか?本質から理解する」→ 深い理解

    この記事は単なる煽りではなく、実質的な付加価値を提供していました。

    2つの価値の提供:

    1. 即座の解決方法(How-To)
    2. 本質的な理解(Why)

    煽りではなく、「別の角度からの価値提供」だったことが、比較的良好な結果につながったと考えられます。

    「レベル1」アプローチの誤解

    今回のテストは、SNSで流行している「レベル1」アプローチを技術ブログに適用しようとしたものでした。

    「レベル1」とは何か

    • 複雑な情報を削ぎ落とす
    • 一文で理解できる簡潔さ
    • 「なるほど!」という知的満足感
    • 実践よりも理解を優先

    なぜ技術ブログでは機能しなかったのか

    「レベル1」が対象とするのは:

    • 「勉強した気になりたい」人
    • 知的満足感を求める人
    • 実装しない人

    技術ブログの読者は:

    • 実際に問題を解決したい技術者
    • 今すぐ実装したい開発者
    • 具体的なコードを求める人

    このミスマッチが、今回の失敗の根本原因です。

    学んだこと

    1. 技術ブログに煽りは不要

    数字が明確に示しています。技術ブログで煽りタイトルは:

    • PV数を大幅に減少させる
    • SEOで不利になる
    • 読者の信頼を損なう

    2. 具体性こそが価値

    技術記事で最も重要なのは:

    • 具体的な問題の提示
    • 実装可能なコード
    • 明確な手順

    抽象的な「気づき」や「本質」だけでは、読者のニーズを満たせません。

    3. 読者を見誤らない

    技術ブログの読者は:

    • 煽りを見抜く
    • 虚偽を見破る
    • 実質的な価値を求める

    読者を舐めてはいけません。

    4. 「付加価値」と「煽り」の違い

    Swiper記事が示したのは、真の付加価値は有効ということです。

    煽り:

    • 「9割の人が知らない」
    • 「後で必ず後悔する」
    • 誇張や虚偽

    付加価値:

    • 「本質から理解する」
    • 異なる視点の提供
    • 実質的な深掘り

    おわりに

    「煽り記事」は一見効果的に見えますが、技術ブログにおいては完全に逆効果でした。

    技術ブログで最も重要なのは:

    • 具体的な問題解決
    • 実装可能なコード
    • 誠実な情報提供

    この3つを徹底することが、長期的なサイト成長につながります。

    煽りに頼らず、実質的な価値を提供し続けること。それこそが、技術ブログの王道です。


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